ルネサンス期から19世紀末までの名作を数多く所蔵しているスコットランド国立美術館は、美術ファンはもちろん、エジンバラに来たら一度は訪れたい美術館です。
ここでは、スコットランドの絵画史に残る名画のほか、なんとレオナルド・ダ・ヴィンチ、ゴッホ、モネ、ラファエロなど有名画家の作品も無料で見ることができます。
特にフェルメールの「マリアとマルタの家のキリスト」は必見の名画。
- スコットランド国立美術館の基本情報やアクセス
- スコットランド国立美術館で絶対に押さえておきたい見どころ10選
実際に訪れて分かったスコットランド国立美術館の情報を詳しくご紹介します。
スコットランド国立美術館について
1859年に開館したスコットランド国立美術館は、首都エジンバラにあるスコットランド最古の美術館です。
一歩進むたびに名作に出会えるほどコレクションが充実した美術館ですが、決して人は多くないため、ゆっくりじっくりと絵画と向き合える環境でした。
アクセス
スコットランド国立美術館は、ご紹介している国立美術館と王立スコットランド・アカデミーの2つの建物から構成されています。
美術館のすぐ前にある王立アカデミーは、エジンバラ市街の中心ストリートであるプリンセスストリートに面していて、観光をしていると一度は必ず目にする建物。
この王立アカデミーのすぐ後ろに国立美術館があります。
住所
The Mound, Edinburgh, EH2 2EL
最寄り駅
電車:Waverley(ウェーバリー)駅から徒歩5分
トラム:Princes Street(プリンセスストリート)駅から徒歩2分
バス:The Mound(ザ・マウンド)、もしくはPrinces Streetで降車
開館時間
10:00〜17:00(木曜は10:00〜19:00)
8月は毎日18:00まで
休館日
12/25、12/26
入場料
無料
所要時間
大きな規模の美術館ではありません。
見学にかかる所要時間は、館内全体を一通り見て回るなら1時間、ゆっくり見て回るなら2時間くらいが目安になります。
入場の際に並ぶことはほとんどなく 、比較的空いています。
セキュリティーチェック等もありません。
写真撮影について
館内での写真撮影は可能です。
フラッシュ撮影は禁止されていますが、三脚を使用する場合は美術館の許可が必要です。
スコットランド国立美術館の見どころ10選
ここでは、スコットランド国立美術館の数ある展示の中から、実際に足を運びこれだけは見逃せないと思った傑作をご紹介します。
作品①:サンドロ・ボッティチェリ「眠るキリストと祈る聖母」
「ヴィーナスの誕生」で有名なフィレンツェの画家ボッティチェリの一枚。
とげのないバラの上に敷かれた毛布で眠るキリストと聖母マリアが描かれています。
ボッティチェリ特有の優しくも物憂げな表情のマリアがとても印象的です。
あまりの美しさに見入ってしまいました。
作品②:レオナルド・ダ・ヴィンチ「糸車の聖母」
レオナルド・ダ・ヴィンチの作品。と、美術館では紹介されているのですが、実はこの「糸車の聖母」はいわく付きの絵画。
というのも、ダヴィンチの弟子や後世の画家たちによる模写や、構成を似せた作品が40点近く現存しているんです。
その中で実際にダヴィンチが手がけたものは2点。
専門家の間では、これが本物か贋物か意見が別れている作品ではありますが、スコットランド国立美術館にあるこの作品は、大部分がダヴィンチが描いた、いわゆる本物ではないかとの説が濃厚です。
未だ結論が出ていない謎に包まれた作品ですが、これが本物なのか贋物なのか、実際にあなたの目で確かめて見てください!
作品③:ラファエロ・サンティ「聖母子像」
ダヴィンチやミケランジェロとともに、ルネサンスの三大巨匠といわれているラファエロの作品。
この絵画はラファエロがダヴィンチの影響を受けたとも言われていて、柔らかく曲線を描くようなマリアとキリストが印象的です。
37年という短い生涯の中で、数多くの作品を世に残し、スコットランド国立美術館にも数点が展示されています。
作品④:フィンセント・ファン・ゴッホ「花咲く果樹園」
オランダの印象派の画家ゴッホが、南フランスのアルルに住んでいたときに描いた作品。
この頃のゴッホは、果樹園をテーマに創作することに夢中になり、「アルルの果樹園」に関する多く名作を残しました。こちらはその1つです。
この絵の木はプラム。
細やかな筆遣いによって、スラリと伸びる枝やそこに咲く白い花、そして緑の芝生が美しくも静かに描かれています。
作品⑤:クロード・モネ「積みわら 雪の効果」
印象派を代表するフランス人の画家モネの作品。
フランスのノルマンディ地方の田園都市における美と豊穣を象徴する光景が、当時この積みわらでした。
散歩中にこの積みわらの存在に興味を抱いてから、多くの積みわら作品を手がけ、その数実に30点以上。
「こんなお菓子があるような気がする…」と思ったのは私だけでしょうか。
作品⑥:ヨハネス・フェルメール 「マルタとマリアの家のキリスト」
オランダの画家ヨハネス・フェルメールの作品。
彼の現存する作品数は三十数点と少ないことから、他の画家と比べても作品を目にする機会はごくわずかでとても貴重です。
今回スコットランド国立美術館にきたのも、彼の作品を見るためといっても過言ではありません。
この作品はフェルメールの初期のもので、2点ある宗教画のうちの1つで、現存するフェルメールの作品では縦158.5×横141.5cmと最大です。
この絵の中でキリストと目を合わせているのが姉のマルタで、頬杖しながら話を聞いているのが妹のマリア。
キリストが来るたびに懸命に働く姉のマルタよりも、ただ話を聞く妹をマリアをキリストは評価したというエピソードがあります。
私が姉ならやってられません…!
作品⑦:ジョン・シンガー・サージェント 「レディー・アグニュー」
19世紀後半から20世紀前半のアメリカの画家ジョン・シンガー・サージェント。フランスで美術教育を受け、おもにロンドンとパリで活動をしていました。
上流社交界の人たちの肖像画を描くことが多く、ここに描かれているのも準男爵アグニューの妻であるガートルード・ヴァーノン。当時28歳でした。
凛とした表情と柔らかく華やかなドレスがとても印象的です。
作品⑧:エドウィン・ランドシーア「峡谷の王」
動物画で知られているイギリスの画家エドウィン・ランドシーア。
ロンドンのトラファルガー広場のライオン像の作者として有名です。(三越のライオン像のモデルです!)
スコットランドの険しい峡谷に堂々とたたずむ牡鹿はまさに王の風格。
同時に、スコットランドが自然豊かな土地であることがこの絵から伝わってきます。
19世紀のイギリス絵画では最も有名な作品の1つであり、ポスターやロゴなどでも使用されてきました。
作品⑨:ヘンリー・レイバーン「スケートをする牧師」
湖上を優雅に滑っているのはスコットランド国教会の牧師であるロバート・ウォルカー。
スコットランドを代表する絵画の一つで、スコットランド国立美術館で最も価値のある財産の一つとも評価されています。
また、BBCラジオ4が主催した「イギリスの偉大な絵画10選」にノミネートされたことも。
描かれているウォルカー牧師は、幼少期を過ごしたオランダでスケートを学び、その後は世界最古のスケートクラブであるエジンバラ・スケート協会のメンバーにもなりました。
シルクハットを被ったフォーマルな服装に目を奪われがちですが、よくみるととても簡素なスケート靴を履いています。
当時のスケート靴はどれもこのようなスタイルだったのでしょうか。
作者はレイバーンとされていますが、専門家の間ではフランス人の画家によって描かれたのではとも言われています。
作品⑩:フレデリック・エドウィン・チャーチ「アメリカから見たナイアガラの滝」
アメリカの風景画家フレデリック・エドウィン・チャーチの作品。
縦257×横227cmの大きな絵画から、ナイアガラの水しぶきが飛んできそうなほど、圧倒的な存在感を放っています。
流れ落ちる滝の水や、水煙、水の色、滝にかかる虹がとても写実的で遠目から見るとまるで写真のように見えました。
圧巻の一言です。
スコットランド国立美術館まとめ
エジンバラの中心部にあるため、アクセスがとても便利なスコットランド国立美術館。
美術館の規模はそこまで大きくはありませんが、1部屋1部屋に展示されている作品はどれも傑作ばかりです。
しかもそのどれもが無料で見ることができるなんて、さすがイギリス。(イギリスでは多くの美術館や博物館の入館料が無料!)
美術ファンならずとも見応えのある美術館、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。