海外に1年以上行く場合、海外転出届を出すことで、住民票を抜くことができます。
もちろんこれは任意のため、日本に住民票を残したまま渡航することも可能。
「はて、一体どちらがベストな選択なのか?」
と迷っているあなたに向けて、それぞれのメリット・デメリットを検討してみました。
海外にこれから1年以上行かれる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
海外転出届を出すメリット・デメリット
- 住民税が免除される
- 国民保険の支払いが免除される
- 国民年金の支払い義務が免除され、任意となる
- 医療費が全額負担になる
- 国民年金を支払っていない期間分、受給額が減る
- 印鑑証明が発行できない
- クレジットカード、銀行口座を新たに作ることができない
- 銀行口座を閉鎖しなくてはいけないことがある
住民票を抜くと3つの免除がある
住民票を抜く=海外転出届を提出することです。
この海外転出届を市町村役場に出すことで
- 住民税の支払い
- 国民健康保険の支払い
- 国民年金の支払いの義務
が免除されるため、金銭的にはかなりのメリットがあります。
ただ一方で、これらを免除されてしまうと日本の行政サービスを受けられなくなるため、もしもを考えたらなんとも悩ましいところ。
住民税の免除
前年の収入に基づいて支払い金額が決まるのが住民税。
日本に住んでいるあいだ、みなさんはお住まいの都道府県+市町村にこれを納めています。
源泉徴収票をご覧になるとわかるかと思いますが、毎年結構な金額です…。
ただ、海外転出届を提出することで、この住民税が免除されます。
メリット
- 住民税が免除される
これまで支払っていた数十万単位のお金が免除されるのは、経済的にとても有難いこと。
デメリット
- 特になし
住民税というのは1月1日に日本に住民票があるかないかで、支払いが決まるもの。
例えば
2019年1月10日に渡航したとすると、2019年度の住民税は1年分支払わなければなりません。免除になるのは2020年度からです。
2018年12月10日に渡航したとすると、2019年度の住民税は免除になります。
渡航する日にちで住民税の支払い金額が大きく変わりますから、スケジュールを自分で決められる方はこの辺りを配慮して渡航日を検討してもいいですね。
ただ、ふるさと納税をしている方は渡航日によっては、住民税控除を受けられない場合もありますからご注意ください。
関連記事>>>ふるさと納税で損してない?海外渡航前に気をつけたいこと
- 海外転出届を提出すると住民税は免除される
- 住民税の支払いはその年の1月1日に日本にいるかどうかで決まる
国民健康保険の支払い免除
国民健康保険は会社員や公務員以外の方が加入しているもの。
- 個人事業主
- パートやアルバイトなどで職場の健康保険に加入していない人
- 退職などにより、職場の健康保険を抜けた人とその家族
などが当てはまります。
住民票を抜くことで国民健康保険の支払いが免除される一方で、国民健康保険の資格が自動的に喪失してしまいます。
海外転出届を出そうかどうか、まさにここで悩む人が多いのです。
メリット
- 国民健康保険料が免除される
デメリット
- 国民健康保険に加入できなくなる
- 医療費が全額負担
当然ですが、国民健康保険に加入をしないと、医療費が全額負担に!
そのため、海外転出届を出して渡航される方は海外旅行保険や現地の学生保険に加入することを強くおすすめします。
ちなみに、住民票を抜かなければ国民健康保険に加入し続けることは可能です。
その場合はこれまで通り、保険料を納める代わりに、海外での医療費も3割負担になります。
が、ここで海外での医療費3割負担というのは、海外で支払った医療費の7割が返金されるという訳ではありません。
海外で受けた医療行為を日本で受けた場合に置き換えて、金額が決定されます。
海外では莫大な支出だったのに、日本から戻ってくるのはわずかなお金ということも考えられますから、海外に渡航される場合には海外旅行保険は是非とも検討してください。
会社員や公務員の場合
会社員や公務員の方は原則として、会社(団体)の健康保険に加入しています。協会けんぽや社会保険組合がそれに当たります。
日本企業から給料を頂きながら渡航する会社員の場合は、住民票を抜いても継続加入となっており、支払いも日本にいる間と同じ状態です。
ただし先ほど述べたように、海外で医療行為を受けた場合に返金される7割は、日本の医療費に置き換えた場合の金額ですから、海外へ渡航する場合は海外旅行保険に加入することをおすすめします。
- 国民健康保険料は免除されるが、医療費が全額負担になる
- 住民票を抜く場合は、海外旅行保険か現地の学生保険に加入した方がいい
- 継続加入もできるが、海外で支払った医療費の3割負担とは限らない
- 会社員や公務員の方は社会保険のため、免除されない。
国民年金の支払い義務の免除
日本国内に住所をもつ、20才〜60才までの人が加入を義務付けられている国民年金。
これも住民票を抜くことで年金の支払いが義務から任意へと変わります。
メリット
- 国民年金の支払いが義務から任意になる。
日本に住んでいる間は、国民年金の支払いは義務でしたが、住民票を抜くことで海外渡航期間、支払いをしないことを選択することができます。
ちなみにこちらが国民年金保険料の金額。
厚生労働省の発表によると保険料は以下の通りです。
- 2018年度(2018年4月〜2019年3月)は16,340円/月
- 2019年度(2019年4月〜2020年3月)は16,410円/月
支払いをしないことを選んだ場合、1年で約20万円ほど納めなくてOKとなります。
デメリット
- 支払っていない期間分の受給額が減額される
「支払いはしたくなければしなくていいよ。その代わり、受給額は減るからね!」となんともシンプルな考え方です。
任意での支払い方
やっぱり年金の受給額が減らされるのはちょっと…という方は、海外渡航中でも年金を納めることが可能です。
手続き方法
- 場所:お住まいの市区町村役場
- 持ち物:年金手帳、引き落とし先の口座番号、転出届
会社員や公務員の場合
会社員や公務員の方も国民年金の支払いを任意にすることができます。
ただ、これらの方は厚生年金にも加入しているため、日本の所属企業(組織)から給料が支払われる場合は大きな影響はありません。
- 住民票を抜くと、支払い義務が任意へ変わる
- 支払わないとその期間分の受給額が減る
- 手続きをすれば、海外にいる間も納付することができる
銀行口座を閉じなければならないことも
海外転出届を提出することで、住民税・国民保険・国民年金支払い義務が免除されることの他に、このようなことにも影響が出てきます。
- 印鑑証明が発行できない
- 銀行口座やクレジットカードが作れない
銀行口座の作成は日本に居住していることが原則のため、新しい口座を開設することはできません。
また、銀行によっては、国内居住者のみ利用可能なところもあります。
海外へ行くので住所変更を…と銀行に行くと、そのまま口座を閉じてくださいと言われることも。
しかし現実的には、海外で使用したカード払いの引き落としなどもあるため、銀行に登録している住所を国内の実家などに移し、口座を残したまま海外移住される方もいるようです。
銀行の中には、非居住者(海外居住者)向けサービスを行なっているところもありますので、抜け道を考えるよりは、このようなサービスを行なっている銀行口座にしておくのがベストです。
海外転出届の手続き方法
手続き方法
- 場所:お住まいの市区町村役場の戸籍住民課
- 申請期間:出国14日前〜出国前日
- 持ち物:身分証明書(免許証・保険証・パスポートなど)
- 市外転出届を記入し、提出。
- 転出先の住所は渡航する国名記入。
ご夫婦で申請する場合、どちらか一方が役所へいけば手続きが可能。
地元自治体に確認したところ、各市区町村によって必要な書類が異なる可能性があるとのことでした。
念のためお住まいの市区町村役場に確認してください。
まとめ:我が家の場合
子どもがいない夫婦二人の我が家の場合ですと、海外転出届を出すデメリットはどれも対策できるものばかりだと思いました。
- 銀行口座やクレジットカードを作りたいのなら住民票を出す前に
- 海外向けの銀行口座を用意しておく
- 海外旅行保険に加入する
- 年金は心配なら払い続ければいい
やっぱり高いお金を払っている住民税の免除には敵いません…。